「MAYUKO…ダイジョブ?」

鼻がくっ付きそうなくらい顔を近づけてる。

「ユ…ユリアさん⁉︎ 」

布団から飛び起き、バッと口を手で覆った。

(マスク…!マスクしないと…)

歌劇団の歌姫に風邪うつしたら大変なことになる。大慌てでベッド横の棚からマスクを取ってつける。ホッと息を吐いてから振り返った。


「あの…ユリアさん…Why?…Here?」

誰と来たの⁉︎…って聞きたいけど、そりゃ勿論……

「よぉ真由!風邪なんだって⁉︎ 」
「ついてないよな。花粉症の次は風邪なんて…」

ノックもせずに入って来るハルとシンヤ。

「…なんで…」

お見舞いらしき物を手に持ってる。ほらほら…と手渡されるプリンとヨーグルト。

「もっさんから風邪引いたって聞いてさ。見舞い行こうか…と話してたら、彼女が一緒に行きたいって言い出して…」
「連れて来たんだ。今日、練習見に来てたんだよ」

シンヤがスプーンくれる。

「そう…」

てっきり坂本さんが連れて来たのかと思った。
安心してプリンのフタを開けかけ、ハッと気づく。

「…そう言えばユリアさん…見送りは?」

レオンさんがドイツへ帰ると言うのに、見送りしなくていいの⁉︎

「レオン…?」

ユリアさんが聞く。

「YES…」

行かなくていいんですか?…って、英語でどう聞くの⁉︎

「SAM イッタ…OK!」

坂本さんが見送りに行ったからそれでいいっていう意味⁉︎ なんてドライな…。

「だ…だってカレシでしょ⁉︎ 寂しくないの⁉︎ 」

思わず日本語で聞いちゃう。クスッと小さな笑い。それってどういう意味なの⁉︎…

「真由、ユリアさんは見送りよりお前に会いたいって言ったんだぜ」
「恋愛より友情…いいよねぇ…」

シンヤのふざけた言葉はともかく、どうして私に?

「MAYUKO…Teach Me 『ヤマトナデシコ』」
「はっ⁉︎…」
「教えてくれって。大和撫子がどんなのか」
「憧れてるんだってさ。さっきからそう言ってたよ」

ハルシンが彼女の言葉を代弁する。

「どういうこと?どうして私に聞くの⁉︎ 」

意味分かんない。私だって大和撫子がどんなのか全く知らないのに…。

「なんでか知らねーけど、お前のこと大和撫子だと思ってるらしいぜ」
「強情で鼻っ柱強いだけなのに」
「はぁ〜⁉︎ 」

ハルシンの言い方もヒドいけど、何よりヒドいその勘違い。どうしてそう思ってるの⁉︎