「とにかく、出来るだけ早く旅に出てください」

 男は言い放ったナシェリオをしばらく見やったあと、ゆっくりと立ち上がる。

「あんたの気持ちも解るがな。運命だけはどうにもならないぞ」

 小さな革袋からコインを取り出し、何枚かをテーブルに投げ置くようにしてドアに向かった。

「こんなに頂けません」

 金貨三枚(およそ三万円)に目を丸くする。

 手間はかかっているが高級な木材を使っている訳じゃない。

 パイプの葉の料金を入れてもこれは貰いすぎだ。

 しかし、青年の言葉に男は振り向くこともなくドアを開いた。