「実際は誰が倒したんです」

 その問いかけにネルオルセユルはしばらく見合ったあと、小さく溜息を吐き出す。

「俺たちがドラゴンと闘っている間、あいつは岩の影に隠れていたよ」

 怒り狂ったドラゴンが威嚇するように真っ黒い体を伸ばし雄叫びを上げると、道楽息子は恐れを成して岩陰に逃げ込んだ。

 仮にも、ドラゴン退治に来た三十一歳にもなる男が泣きながら逃げまどう姿には呆れかえるしかない。

 仲間たちは端緒(たんしょ)からそうなる事は見越してはいたが、いざその姿を目にすると頭を抱えた。

 厄介なドラゴンではあるため、闘うには確かに躊躇いはある。

 しかしながら勝てない相手ではない。

 慎重に攻撃を見極め、酸の息(ブレス)さえ浴びなければこの数なら勝てるはずだ。