潮風を受けた町は全てが潮臭く、あちこちに乾燥して出来た塩が白く付着している。

 金属も手入れをしなければ潮風ですぐに錆びてしまうだろう。

 港のそばにある市場には揚がった魚などが並べられ、辺りには独特の生臭さが漂っている。

 旅人の一人や二人に目を向ける者はおらず、フードを目深に被ったナシェリオは無表情でそれらを眺めたあと酒場に足を進めた。

 グラスと食べ物が描かれた看板が下げられている建物をフードのふち越しに見やり、軽い板張りのドアに手をかける。

 それは見た目と同じく軽いきしみをあげて開き、ようやく旅人に視線が集中した。

 訪れる者が少ないのか、物珍しそうな目が青年の姿をなめる。

 フードを被った旅人の正体を知りたいのかもしれない。