「申し訳ない……。しかし、これが村にある全てなのです」

 小さな村に大金などあるはずもなく、硬貨に換えられるような品も時間もないと頭(こうべ)を垂れる。

「私が不死だからという考えならば間違いだ」

「そのような考えなどあるはずが」

 ナシェリオは否定した古老に目を眇め視線を外す。

 その面差しには、彼の言葉をもとより信じていないと示されていた。

「死ぬような痛みに意識を失い、もがき苦しんでも死は訪れず。手足が吹き飛ばされてもまた生えてくる。それが人間と果たして言えるのか」

 唸るように低く発した言葉は重ねるにつれ、かすれて声を震わせる。

 これまでいかほどの苦痛に絶えてきたのだろうかとニサファは胸が締め付けられた。

 しかし、村を出てからもう三日が経つ。

 町を訪れたアウトローたちにはことごとく突っぱねられ、ニサファには後がなかった。