「親に逆らう事が成人という訳じゃない」

「だったらお前にやるよ」

 ぼそりと紡がれた言葉にラーファンは冷たく返した。

 それがナシェリオを大きく傷つけるものだと知りつつもこらえきれなかった。

 いや、知っていたからこそナシェリオに強い衝撃を与えるため、ことさらに吐き出されたものだ。

 ナシェリオの表情はラーファンの思惑に沿って驚きと憂いを帯びていた。

 してやったりと思う反面、傷つけてしまった事に少しの申し訳なさを憶える。

 それでも、ナシェリオの心の隙を突くにはこうするしかない。

 脆いように見えて芯は強く、言葉をよく知っているだけに説き伏せるにはこのやり方しかラーファンには思いつかなかった。

「俺には、お前だけが頼りなんだ。俺を助けてくれ」

 すがるような目にナシェリオは言葉を詰まらせる。

 そうだ、ラーファンは彼が情に弱いことも知っている。

 概(がい)して頼まれれば断れない性分なのだ。