「もともとそこに財宝があったのか、奴が貯め込んだのかは解らないが、その洞窟の奥には山ほどの金細工銀細工がうずたかく積まれているらしい」

 人間などが造り出した美しい造形物を好むのはドラゴンだけに限らず存在するが、より多くを求めるのは力の強いドラゴンだ。

 財宝集めは彼らの強さの象徴でもあるのかもしれない。

 男は一旦話を切り、充分に興味を引いたと確認すると重々しく続けた。

「そいつは硬く真っ赤な鱗に覆われ、ぎらぎらとした金色の目で洞窟に侵入者はいないかと常に周囲を警戒している。背丈は大人の男の数人分にもなり、頭から尾まではこの広場の端から端まであるだろう。エルフ語や古代語だけでなく人語も話す。口からは熱い炎を吐き、魔法すらも使いこなす奴だ」

 人々はその話に揃ってどよめく。

 どれほど巨大なドラゴンなのかと広場を見回し、怖々と互いにつぶやき合った。