「復讐して何が悪い!」

 ナシェリオを鋭く睨み、黒い霊気(オーラ)を放ちながらゆらりと立ち上がる。

「憎しみこそが力の源だ。怒りこそが強い力を生み出す」

 握りしめた拳を震わせ、己が得たものに悦びを感じているのか口角を卑(いや)しく歪めた。

 そしてふと無表情になり、無言で見つめるナシェリオに優しく微笑みかける。

「お前はずっと俺の傍にいてくれた。これからもそうしてほしい。俺の手を取れナシェリオ、そうすれば苦しまずに済む。お前を傷つけたくないんだ」

 ナシェリオは、暖かな声と共に再び差し出された手をじっと見やる。

 話を聞くまではラーファンと対立するつもりなど微塵もなかった。

 この手を取らなければそうなることは必定(ひつじょう)だ。

 されど、彼に従えばこの世界はどうなる?

 見栄で言っている訳でもなければ、それが虚言でもないことは彼が放つオーラから感じ取れる。

 ラーファンは紛れもなく強大な力を手に入れている。

 そしてその力は強烈な悪意をまとっている。