「冥王の策略に乗ったというのか」

 多くの神々がこれまで語り継がれるなか、冥王は悪神として位置づけられてきた。

 元々は創世記の輝ける神々の一人であったが、力を求める心が闇を呼び込み冥府に墜ちたという。

 そのとき、冥府にはまだ統治する者はおらず、ただ死者の魂たちが通り過ぎるだけの世界だった。

 世界がまだ創られたばかりの頃には悪しきとする存在がいなかった事もあるのだが、墜ちた神が悪の始まりともされている。

 そうして墜ちた冥界を統べるようになり、冥王と呼ばれるようになった。

 それから冥府は彼の者の意識に引きずられるように遺恨を残した魂のみが墜ちて留まり、恨み言をつぶやき続ける暗き世界となったのだそうな。

 その顔は青白く、死者が動いているような不気味な姿に赤い瞳だけがぎらぎらと怒りに満ちている。