英雄の天意~枝葉末節の理~

「お前はいつも優しかった。意味もなく俺に逆らおうとするかもしれない」

 だから俺は待った。

 お前と同等の力を身につけるまで、ずっと冥界でお前を見ていた。

 そして肉体が馴染んだ頃に人のいないこの地に塔を建て、マナを吸収し続けていた。

「ハーフエルフのおかげで見つかってしまったが、もう充分だ」

「この世界を滅ぼすというのか」

 詰まる喉から振り絞る。

 先ほどまでとは違い、ラーファンから黒い霊気(オーラ)が躊躇いもなく放たれていた。

「この世界は俺たちを受け入れなかった。俺は雑草のようにあしらわれ、むごたらしく殺された。したいことは何ひとつ出来ずにだ!」

 声を張り上げ怒りをあらわにする。

 彼の怒りはもっともかもしれない。

 恨み言の一つや二つ口にしたとしても、誰も文句は言えないだろう。