英雄の天意~枝葉末節の理~

「力を貸すとはどういうことなんだ。何故これだけの魔力(マナ)を集めている」

 不安な面持ちのナシェリオを見上げ、ラーファンは鼻で笑うと両手を広げた。

「当然だ。この世界にマナはもう必要ない」

 質問の答えになっているようには思えず顔をしかめる。

 その様子から、ラーファンはかなり慎重に言葉を紡いでいることが窺える。

 彼は昔から、私に重要な事柄を話すときはとても言葉を選んでいた。

「どうして必要がないんだ」

 ナシェリオは、かつての友の瞳に宿る奥底の光に注意を払った。

「この世界はもうすぐ終わる。俺が終わらせる。そのために冥界から送り出されたんだからな」

 耳にした言葉にナシェリオは大きく目を見開き息を呑んだ。

 それが嘘ではないと解るほどにラーファンからはひしひしと敵意が伝わってくる。