途中で命を落としてしまう馬もいたが、彼らは等しくナシェリオに敬意を払っていた。

「すまないな、いつ戻れるか解らないんだ」

 もしかすると、もう戻ることは適わないかもしれない。全ての馬具を外し、馬の尻を叩く。

「行け」

 名残惜しむように度々振り返る馬を手を振って追い払う仕草をした。

 そうして芥子粒(けしつぶ)ほどになった影を認めて翼竜の背にまたがる。

 手綱を引くとワイバーンは翼を大きくはばたかせ、周囲の草を激しく揺らし土埃を上げてゆっくりと上昇していく。

 安定したことを確認すると、ナシェリオは頭を北に向けた。

 風のように進む翼竜から、今し方まで共に旅をした馬を見下ろす。

 どうか、これからのソーズワースに充実した生き方をと願い、凍える大地に最も近い場所を目指した。