「うるせえ!」

「なんだとてめえ」

 あちこちで殴り合いの喧嘩が始まり、聞くに堪えない怒号が積み重なるように酒場中を満たしていった。

 それは、あたかも噴火した火山のように、爆発した感情が周囲に飛び火し激しく広がっていく。

 さすがにここまでの騒動になるとは予想もしていなかったニサファとナシェリオは目を丸くして収拾のつかなくなった酒場を眺めた。

「なんと申してよいやら」

「まあ仕方ない」

 勝手に大騒動になった酒場をぼんやりと視界全体で捉え、ナシェリオはラーファンと大喧嘩をした時のことを思い出していた。