改めて突きつけられた過去に表情を苦くする。

 もう放っておいてくれと頭を抱えたナシェリオに、

「わたしが村を去ろうとしたとき、一人の女性に呼び止められたわ」

 それにふと顔を見合わせる。

「赤毛がとても綺麗な、レイアと言ったかしら」

 ナシェリオはその名に大きく目を見開き、埋もれた記憶が湧き出すように次々と脳裏を横切っていく。

「居場所を訊かれたけれど知らないと答えると、とても悲しそうな瞳をしていたわね。彼女はあなたのことをとても気に掛けていたわ」

 ナシェリオは懐かしむような表情を浮かべ、同時に心苦しい思い出も蘇ったのか愁いを帯びた瞳を伏せる。