こんなはずではなかったのだ。

 ラーファンの死に皆は嘆き悲しみ、あまつさえ私は村を追い出される覚悟をしていた。

 だけれども彼を追悼する者はおらず、それがナシェリオの心をいっそう痛めていた。

「こんなことは間違っている」

 あれほど人気があり慕われていた彼が死んだというのに、誰も哀しまないなんて間違っている。

 けれど……。

 そうさせたのもまた、私なのだ。

 ラーファンを止める事も出来ず、救うことも出来なかった。

 そしていま、私は村の人たちにも罪を負わせようとしている。

 そんなことが赦されるはずがない。

 ここにはいられない──ナシェリオは家に戻り荷物を手早くまとめた。

 まとめ終えて外に出るとき、一度だけ振り返った。