友の死は英雄の誕生の踏み石にされ、その哀しみすらも一蹴(いっしゅう)された。

 どうしてこんなことになるのかと強く拳を握る。

「ナシェリオ」

 ラーファンの母が震えた声で呼びかける。

 息子の死がよほどの衝撃だったのか、一気にやつれた様子にナシェリオは目を合わせられなかった。

「あの子は、ラーファンは立派だった?」

「はい」

 ドラゴンとのやり取りを思い起こす。

「彼は……。とても、勇敢でした」

 ただでさえ息子の死に打ちひしがれている二人に、これ以上の責め苦は必要ない。

 ラーファンはドラゴンと対峙し勇敢に闘って果てた。それでいいじゃないか。

「そう。そうなのね」

 息子のせめてもの勇ましい最期に母親は、どこか振り切れたのか薄く笑みを浮かべた。