「ドラゴンを倒せば財宝も名誉も手に入る。だから──」

 殺すなら私だけを!

 射すくめられながらも吐き出した言葉にドラゴンは目を細め、探るように二人を交互に見つめた。

 ふいに、

「そ、そいつの言う通りだ。俺は、ドラゴンを倒さないかって誘われただけなんだ」

 そうだ、それでいい。

 ナシェリオは己のすべきことは終わったと全身から力を抜き、だらりと腕を垂らした。

 ドラゴンはそれに、手の中の人間をじっと見下ろす。

 大きな金色の瞳にナシェリオも怯むことなく見返した。

[そうか、ならば去るがよい]

 言われてラーファンは「すまない」とナシェリオに目で応えて走り去る。

 ナシェリオは遠ざかる背中に安堵して目を閉じた。