奥に進むに従って冷気は一段と増し、どこからか吹き込んでいる風が気味の悪い音を響かせている。

 ラーファンは生唾を呑み込み、ナシェリオがちゃんと後ろにいるかどうかを振り返り確認しつつ、ゆっくりと奥を目指した。

 内部はやや入り組んでおり幾つかの分かれ道があったが、なるべく大きな穴を選んで進んでいく。

 しばらくすると、ぼんやりとした光が見えてきた。

 二人はたいまつの灯りを消し、岩陰に身を隠してそっと覗き込む。

 そこには、うずたかく積まれた金貨や装飾品の上でとぐろをまいたドラゴンが静かな寝息を立てていた。

「しめた。やつは寝ている」

 喜ぶラーファンの隣でナシェリオはドラゴンの姿に目を見開き身体を小刻みに震わせた。

 全身を覆う艶を持つ深紅の鱗は、所々に群生しているヒカリゴケの淡い光を照り返し、広げればさぞかし立派だと窺える翼は折りたたまれて背中に張り付いている。