エルフのように永遠の命もなければ不思議な力も制限されているというのに、他の血が混じっているというだけで忌み子として扱われるのはいささか悩ましい事だ。

 無論、全てのハーフエルフが不遇という訳ではないだろう。

 それでもなお、大半のハーフエルフは己の正体を隠して生活しているという。

「私に何の用だ」

 女は軽く睨みつけるナシェリオから視線を外し、形の良い自分の指を見つめる。

「わたしは北のエルフが父アナケスと森の民ロロネルの子、エスティエルと申します」

 おもむろに名を名乗り威圧的な目を向けた。

 その堂々たる姿は自らの存在を誇りとしている者のそれであり、揺るぎのない信念に基づくものに他ならない。