幹太は、言葉をくれたことなんてない。
いつでも、いつまでも、黙って背中を向ける。


でも、そう仕向けてきたのは本当は私だった。
私だって分かっていた。


幹太の視線が熱いって分かったのは、婚姻届を出したあの日、幹太がおめでとうを言わなかった時だ。
いつも背中を向けて言葉をくれないのは、馬鹿な私から気持ちを隠すため。

それに気付いても、私にはどうすることも出来ない。


今まで生きてきた中全てに、晴哉がいるの。
幼稚園も小学校も、中学も高校も大学も晴哉がいたの。


馬鹿で単純で強制ばっかで生きてきた私と言う人間を、守って形成してくれていたのは晴哉だよ。

結婚して、今からだって思っていた。

安心を、暖かさを、幸せをくれた晴哉に、家族として包み込んで安心して帰って来られる家を作ろうって一歩を踏み出したばかりだった。

そんな幸せは、交通事故で簡単に晴哉ごと奪われて。

本当は私、一緒に死んでしまいたかった。死にたかった。
それぐらい晴哉がいないと情けない女なんだ。