溢れてくる涙が、唇まで流れてきて、塩辛い美味しくない涙に更に視界がぼやけてきた。
そのまま、私の両手を片手で押さえつけて、右手が私の腰をなぞった時、やっと動くことができた。
「っつ」
唇から、幹太の唇が剥がれると同時に、鉄の味が口の中に広がった。
一瞬、隙が出来た幹太を膝で蹴りあげて、身をよじり晴の玩具箱まで這いずっていくと、手当たり次第に玩具を幹太へ投げつけていく。
片手で簡単に止める姿から見ても、蚊ほどのダメージも与えてないことが分かった。
頭や肩に当たっても、抵抗らしい抵抗もしない。
「あんた・・・・・・最悪っつ」
悔しいのに、涙が零れて上手く声が出ない。
ごしごしと唇を拭うけど、全然感触が消えてくれなかった。
悔しくて、立ち上がって自分の引き出しから卒業アルバムを取り出すと、幹太をそれで殴りつけた。
馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
「俺はお前の傍から離れたくなくて、ずっと言えなかった」
アルバムを片手で奪うと、床に静かに置きながら言った。



