「その辺にしとけよ。晴一にも聞こえているんだから」

「何よ。それより、その袋何? 懐石と和菓子はまだ配達時間じゃないよね」

「あほ。今日は、――晴の誕生日でもあるだろ」

包みから取り出したのは、動物の絵がいっぱい載っているベビーウォーカーだった。
ガサガサと開けると、縁側の端っこで組み立て始める。
こういうのは器用だから羨ましい。

「晴―。おじさんが誕生日プレゼントだってさ。良かったね。この隣の家のおじさんだよー」

大人の腰ぐらいしかない、ほぼ無意味な垣根の向こうは、幹太の家でもあり、私が働いている和菓子屋『春月堂』がある。
晴哉の家を跨いで、幹太の家が大通り側、私が裏の小川が流れる小道に家がある。
それでも、私の家には幹太の家の甘い和菓子の匂いが毎日流れてくるのが大好きで、
おまけにうち、晴哉、幹太の親は私たちが私たちが物心付く前から仲が良かったから、私たちが仲良くなるのも仕方が無いというか、必然というか。

「お前の家も、この家も縁側が多いし危ないんだから、もっと気をつけろよ」