嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


私は、その瞳を覗きこんで考える。

お腹が空いたのかな?
眠たいのかな?
遊びたい? 抱っこ?
目を見ただけで、晴の気持ちが分かれば、晴が望むことを全て叶えてあげられるのに。
そう思ってしまう。

その、瞳はつぶらで純真で、きらきらと輝いている。

でも、その何を考えているか分からない、難しい顔の表情は、幹太にもよく似ていた。

私が覗きこんだら、更に強く睨みつけてくるから違うけど。

気付いてほしい、気付かないでほしい、
でも、見てる、こっちに欲求があるから。

それが、面倒くさい。

「桔梗ちゃん、もう遅いから晴ちゃん寝かせてあげなさいね」
「あ、はい。もう寝ます」

スヤスヤと寝息が聞こえてくると、何だかホッとして涙が浮かんできた。

この子は、温かくてこの子には感情があって、――生きている。

「幹太、まだ帰って来てないね」

垣根の向こうにあるはずの、幹太の黒のエクストレイルは置いていなかった。