低い声。
絞り出すような、切なく苦い声。
顔を見上げても、表情からは何も読みとれない。
その言葉の裏の裏に気付いてほしいのか、気付かなくてもいいからただ吐き出したいのか。
私には何一つ分からない。
「私はなんて言ったら、正解なの?」
分からない。
何を言えば、幹太のそのしかめっ面が、綻ぶのか。
何を私に言わせたいのか。
昔からそうだったし、私と晴哉が婚約した時も『おめでとう』なんてえ言ってくれなかったんだもの。
頑なに言わなくて、背中しか見せない幹太に、私が無理矢理言わせた風で決着が付いたけど。
「行ってくる」
短いレスポンスで、ニュアンスで、イメージで。
全て全て、分かって欲しいと思うのは無理な話だ。
気づいたら、いけない。
気付かない。
裏口を開けると、店の中で待っていた美鈴ちゃんが既にもう笑顔でスタンバイしていた。
振り返らない幹太の代わりに、私に手を振ってくれた。
眩しくて愛らしい笑顔で。



