嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


「桔梗」
「あ、動くと和菓子が――」


起き上がった幹太は、後ろへ倒れ込みそうになった私の腕を引っ張り、そのまま寝転ぶ。

幹太の庭で一番大きな花壇は桔梗の花で、多くて大きくて、咲き乱れていく。


「和菓子が潰れちゃう」
「目の前に本物がいるんだから、潰れても構うか。こっちの方が――綺麗だ」
それは、咲き揺れている桔梗の花の事なのか、泣きはらしてぐちゃぐちゃになった情けない顔の私なのか。

一面の桔梗の花の中、幹太の長くて綺麗な指先が私の頬に触れ、涙を掬う。

唇に触れて、優しく薄く開いてしまう。

幹太の胸に置いた手に、幹太の指が絡む。
指輪をなぞりながら、優しく私を包み込んでいく。


息も忘れて埋めれていく桔梗の花の中、初めて心を寄せあえた。

重なって行く私たちの唇を、淡く月が照らして桔梗が隠してくれた。

私たちは、月を見上げ咲き揺れる桔梗と月。

この、距離でいい。
そんな嘘をまた吐くというならば、その背中に噛みついてやる。


桔梗の花の上に、月が落ちてくれた。

そんな、話。