「桔梗」
「晴哉も忘れないよ。28年ずっと晴哉を愛してきたの。まだ料理も車も怖いままだし、晴の父親は晴哉だよ。でも、これから28年同じ時間、幹太を大切にしたい。晴哉はその倍の56年だけど、でも、同じくらい大切にする。大切にするよ」
ポロポロと泣く私は、子供に戻ったみたいだ。
感謝しかしない。
私と言う形を形成してくれた晴哉も、幹太の気持ちと向き合わせてくれた巴ちゃんも美鈴ちゃんも。
晴という命をくれて、生きさせてくれた晴哉の思いのお陰で、私は大切にしてくれる幹太という存在を得られた。
今度は彼に、私が還して行きたい。
沢山の愛情を。
「良いのか、お前はそれで」
「結婚とかそんなぐちゃぐちゃした障害はまだ待ってね。晴哉の名字はまだ私の一部だから」
背中に、私を刻みつける。
その背中で受け止めて。
貴方の気持ちに噛みつく私の気持ちを、受け止めて。
「退け」
「嫌だ」
「抱きしめたいから、退け」
「……嫌だ」
正面から真っ直ぐに抱きしめられたら、その甘さに私は溶けてしまいそうだ。



