嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「って、あれ? 桔梗さんっ」

咲哉君の言葉に更に背中を押された私は、幹太の元へ走った。


桔梗の花の前で、胡坐を掻いて座っている幹太に。

そのまま、その背中へ飛び込んだ。

「幹太っ」

「うわっ」

受け止めることも出来ず、頭から桔梗の花に飛び込んでしまった幹太は、背中に乗っかった私を睨みつける。

「お前、さっき、別れたばっかだろ」
「これ。これっ」
持って来た二つの作品に、幹太は目を見開いた。
そよそよと桔梗が夜の風にそよぐ。
誰からともなく、縁側の扉がパタンパタンと閉まっていくのが笑えてしまった。

「これ、――これ、私だ」
「か、勝手に試作品を取り出すな、馬鹿」
「もう咲哉君が美鈴ちゃんに見せてたよ」
「あの野郎」
舌打ちをしながらも、一面に広がる桔梗の花に幹太は心を奪われていく。

もう、私の気持ちは止まらなかった。
価値観なんて、もうどうでもいい。
誰からどう見られたって、もうどうでもいい。

月の表面は冷たくても、温かくてもどちらでもいい。

心が温かいんだから。


「好きだよ。幹太。もう誤魔化せない」

両手で持ち上げた桔梗の和菓子に頬ずりしながら、もう隠せなかった。