嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


「あ、いらっしゃいませ」
「……どうも」
明らかに不機嫌を貼りつけた会釈をして、すぐに咲哉君の方を向いた。
「あの、幹太は?」
「え、今日はもうとっくに上がったじゃないですか」

そうだ。暖簾もとっくに店に入れたのに。
でも、何で美鈴ちゃんが居るのかと、首を傾げると咲哉君がにっこりと笑う。
「急な来客で、おはぎが余っていたらって連絡をくれたんです。俺、洗い物や片付けしてたから」
「もう失礼します。ありがとうございました」

咲哉君に深々と頭を下げた美鈴ちゃんは、足早に店から出て行く。
「あの、美鈴ちゃん」
「何か?」
「この前は笑ってごめんね」
美鈴ちゃんの、真っ直ぐな幹太への思いを笑ってしまって、本当にあれは駄目だった。
可愛いなんて、私みたいに恋愛から逃げていた奴が言ったらいけないことだった。

「そうやって、素直になれる貴方が羨ましくて――大嫌いです」
「そ、そんなぁ」
「咲哉君、アレ、見せてさっさとこの人どっかにやって下さい」