嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


あまり喋らない分、幹太の言葉は理解できなかったりきつく感じたりする時も多いけど、いやほとんどそうなんだけど。

こうやって、ぽとりと手のひらに落ちてくるような優しい言葉もくれる。

「仕事場でも、もうちょっとその優しさを押しだしなさいよ」
「断る」
「幹太がキツイ言葉で注意するから、パートが全然続かないんだからね! 美麗ちゃんやあのちゃらい高校生みたいに純粋な子はなかなか居ないのよ!」

私がきつくそう言うと、また説教かと言わんばかりに溜息を吐きやがった。


幹太が和菓子職人として働く老舗和菓子屋『春月堂』で、私も売り場の主任として働いているが、幹太が強面すぎて接客のパートが常に足りていない。

今居るのは、週三回、私が二号店のデパ地下の春月堂へ行くときに入ってくれている美麗ちゃんと、春月堂の大事な常連客の呉服屋の息子さんの高校生を預かっているだけ。
ベテランパート二人は、デパ地下で優雅に働いているが本家が忙しい時も手伝おうとはしないんだから。