逃げていてもいつかは顔を合わさなければいけないわけで。
この先、こんな事はもうないとは思うけど、もし恋愛するならば職場恋愛は止めよう。
別れた後に顔を見なければいけないのは、精神衛生上、よくない。
ましてや、私は押し倒されてキスされた側なので、顔を合わせずらい。
でも、職場は此処しかないのだから、腹をくくるしかない。
「おはようございます。桔梗さん」
「ざーす」
美麗ちゃんと相変わらずの咲哉くんが居てくれるからまだ良いけど。
「おはよー。今日の賄いって何かな。お腹空くよね」
「まだ開店もしていないのに」
苦笑する美麗ちゃんに、私もお腹を掲かかえて笑う。
確かにまだ暖簾を外に出していない、開店前の掃除中なのだけど奥から餡の甘い匂いが漂っているんだもん。
どうせ、作っている野郎は甘い顔の一つも出来ない奴なのに。
いや、餡に甘い部分を吸い取られて、あんな苦そうな顔をしているのかも。

「幹太さんが新作作っているみたいですね。もう構想は出来ていて後は味が納得いくように調整中だそうッよ」