展望台に着くとハルさんの顔が落ち着いていた。
繁華街にいるときより顔が柔らかい。
繁華街にいるときのハルさんは何だか疲れている。
自分がどんな風に思われているかわかっているからだ。
ウンザリするのもわかる。
「こっから見る夜景、気に入ってる」
タバコを咥えて、煙を吐き出しながらいう。
「夜景すごくきれいです」
「アンタに見て欲しかった」
「どうして」
「俺と同じキモチになって欲しかったから」
「同じ気持ち?」
「この展望台からの夜景、落ち着かないか?」
「はい」
「何かに張りつめたとき、俺はこの夜景をみて気持ちを抑える」
「張りつめたとき?」
「あの繁華街は俺に刃向う奴は居ない。でも初めはそうじゃなかった」

