「じゃあ、今から迎えに行くから。

ちゃんと待ってろよ」

「うん、わかった」

スマートフォンの画面を指でタップして電話を終わらせると、荷物をまとめた。

病院から借りていた寝巻を脱ぐと、最初の日に着ていた服に着替えた。

「忘れ物はもうないわね」

そう呟いてベッドのうえのボストンバックを持とうとした時、コンコンとドアをたたく音がした。

「はーい」

ドアに向かって声をかけたら、ドアが開いた。

病室に入ってきたその人物に、私は驚いた。

「忍兄ちゃん…」

名前を呼んだ私に、
「元気そうでよかったよ」

忍兄ちゃんは笑いかけた。

「えっと…仕事はどうしたの?」

そう聞いた私に、
「今日は休み。

えーっと、荷物はこれ全部?」

忍兄ちゃんはベッドのうえのボストンバックを指差した。