ダンデライオン

彼女がいなくなると、私は両手を頬に当てた。

「――忍兄ちゃんは私の“大切な”…」

呟いたとたん、忍兄ちゃんの顔が頭の中に浮かんだ。

忍兄ちゃんは私の“大切な”…ううん、私の中ではそれ以上の人なんだ。

子供の頃から仲がいい幼なじみじゃない。

忍兄ちゃんは私の“大切な”、
「かけがえのない人なんだ…」

誰もいなくなった病室に、私の呟いた声は大きかった。


翌朝。

目を覚ますと、枕元に置いていた時計代わりのスマートフォンに手を伸ばした。

時間は朝の5時45分を表示していた。

当然のことながら、忍兄ちゃんの着信はなかった。

期待していたって言う訳じゃないけど、一言くらい寄越してもいいんじゃないかしら?