ダンデライオン

私の心臓がドキッ…と鳴った。

そのセリフを徳井さんに言った忍兄ちゃんの顔が、浮かんだような気がした。

何でなんだろう?

何でこんな時に気づいたのだろう?

どうしてここで初めて、私が忍兄ちゃんに抱いていた気持ちに気づくの?

おじさんが生きていた時、私は“大切な…”の後にどう言えばいいのかわからなかった。

あの時は、気づくことができなかった。

私が忍兄ちゃんに抱いていたこの気持ちに、気づくことができなかった。

「それを聞かされた私は、浅井さんから身を引くことしか方法がないんだなって思いました。

あなたのことを深く思っている以上、もう浅井さんを振り向かせることができないんだなって。

そう思って、浅井さんをあきらめることにしました。

私、来月から北海道支社の方へ移動することになったんです」

徳井さんは微笑みながら言った。