その音がした方向へ、私は向かって行く。

行っちゃダメ!

そっちに行っちゃダメ!

26歳の私の叫び声は、小学3年生の私の耳に届いていない。

その音がした場所で何が起こったか、私は知っている。

早く目を覚まして!

お願いだから目を覚まして!

この先の結末を見たくないから、早くこの夢から脱出したい。

なのに、小学3年生の私は音がした方へ向かって行った。

コンクリートの地面に広がっている鮮やかな赤色に、声を出すことができなかった。

「――忍、兄ちゃん…?」