忍兄ちゃんの後ろ姿を見送った後、私は自分の後頭部に手を触れた。

「抱きしめられちゃった…」

そう呟いたとたん、自分の顔の温度が上昇したのがわかった。

あれは、事故なんだってば。

そう言い聞かせても、忍兄ちゃんの躰から香っていた高そうなシャンプーの匂いを思い出してしまった。

「…って、私は変態か」

忍兄ちゃんに抱きしめられたのは事故なんだから。

私には、朔太郎がいるんだから。

と言うか、朔太郎が私以外の女の人と一緒にいるところを見ちゃったからおかしなことになっているんじゃないか。

「もう寝よう…」

呟いた後、私は居間から出て行った。