忍兄ちゃんからの着信はまだない。

時間は7時2分になっていた。

「どうするのよ…。

私、浴衣の着つけなんか知らないのに…」

スマートフォンをテーブルのうえに投げ出した後、私は畳のうえに横になった。

亡くなった忍兄ちゃんのお父さんが普段から和服を好んで着ていたと言うこともあり、彼は浴衣や着物の着つけができるのだ。

後少しで朔太郎との待ちあわせ時間になってしまう。

忍兄ちゃんに電話をしようかと思い、躰を起こした時だった。

「ただいまー、遅くなってごめん!」

玄関のドアが開いた音がしたのと同時に、忍兄ちゃんの声が聞こえた。

「やっと帰ってきた!」

私は忍兄ちゃんを迎えるため、居間を後にした。