ダンデライオン

「へえ…」

私が思っている以上に、ホテル業界は複雑みたいだ。

そう言えば忍兄ちゃんが名古屋に行ったのも、そこに勤めていた人が急病で倒れたからって言う理由だったんだっけか…。

そう思った私に、
「あった!

あったよ、麻子!」

お父さんが何かを手にして戻ってきた。

何があったって言うのかしら?

私はお父さんが差し出した何かを受け取った。

黄色の封筒で、『八束 麻子様』と私の名前が書いてある。

「あっ、俺が出した手紙!」

忍兄ちゃんが私の手に持っている封筒を指差した。