その児童とは俺達 ――一般に「フェノメナ」と呼ばれる―― のことを指す。

まあ、いわゆる「孤児」だ。

日本政府が出した新進気鋭の政策、「多子化政策」。
戦後から少子化がどんどん進み、このままでは未来を担う若者がいなくなる、と焦った政府はこの政策を打ち出した。

世界中の著名人や能力の高い人間から精子、卵子を言い値で買い取り、交配する。そこで産まれた能力の基本値が高い子供達をこの施設に軟禁し、英才教育を施す。そして成人したら解放する。

それを繰り返して人口の増加を促すのだ。

だからこそ、氏がない。
持つべき両親はおらず、疑似母体である容器から産まれてきたため、産みの母もいない。
ほとんどの子供が当たり前のように持っているものを俺達は何一つ持っていないのだ。

そのかわりにあるのは、並外れた能力だけ。それも研究が未完成なおかげでいつ暴走するかわからず、その危険性のある14歳までは施設の外に出ることすら叶わないのだ。