「あの、どちらさまですか?」
「秋元恵麻と言います。長岡陽斗さんですよね?」
「え、えぇ。そうですけど。」
「私のことは知らないと思います。陽斗さんにはお会いしたことありませんから。」
「俺には、ですか?」
「はい。でも、妹さんにはお会いしたことがあります。」
伊織に?!
「妹、伊織にですか?」
「はい、会ったことあるというか、中学の時親友だったんですよ。」
中学は半年しか通っていなかったが親友がいたことに俺は驚いた。
「私が話したいのは伊織ちゃんのことです。」
「伊織のことですか?」

「伊織ちゃんが亡くなってから10年が経ったのに犯人は未だに見つかってないんですよね。だから、私達で犯人を探そうと思って。」

「え?あの、その…どういうことでしょう。」
「だから私達で犯人を見つけて、復讐しませんか。」
復讐。なんども考えたことだった。
伊織のために犯人を同じ目に合わせよう、と考えたこともあった。
しかし、探せる方法が無かったのだ。

「復讐って言ったって犯人もわからないのにどうするんですか?」
「私、フリーライターをやっているんです。警察関係者へのインタビューで情報は掴めます。犯人は自ずとわかると思います。」
「あ、あの秋元さん、」
「どうします?やめますか?」
「い、いや…」
急に来て、一緒に復讐しませんかって言われてもすぐすぐ返事はできない。
「復讐って具体的にどんなことするんですか?」
「どんなことって、もちろん殺しますよ。」
そう言った目は、色を失ったように俺を見つめた。
「やっぱり、できませんかね?」

「…いや、やります。俺なにも役に立たないと思いますけど。」

「いえ!1人より2人のほうが心強いです!」
ぱぁと笑顔を見せて、こう言った。
「これ、私の番号です。登録おねがいしますね?」
「あ、は、はい。」

伊織が亡くなって10年、あれから止まっていた時間は少しずつ秋元恵麻と名乗る女性が動かし始めた。