近くて遠い存在。











あたしは何も聞きたくなかった。
小走りでロビーへ向かう。
しかし、そこには蒼と彩里紗ちゃんがいた。
…ここも告白!?


あたしは仕方なく、部屋に戻ろうとした時だった。



「…桜木さん?」

「小柳くん」



ばったり小柳くんと出くわした。
自販機の近くのソファーに座った。



「はい」

「…えっ?いいの?」

「うん」



小柳くんは自販機でジュースを買ってくれた。
…優しいな。



「ありがとう」

「…暇でさ、出てきちゃった」

「…あたしも」

「…なんか、みんな忙しいみたいだね」

「うん…」



今頃、晃と蒼は告白されてんだろうな。
…どうするのかな。
…咲希も彩里紗ちゃんも可愛いし、いい子だし。
…付き合うのかな。



「…結奈ちゃんが今、俺を見ていなくても俺は結奈ちゃんのこと本気だから」

「小柳くん…」



小柳くんの目は嘘を言っていないと思った。
朝倉先輩とは違う優しさを感じた。



「ありがとう、嬉しい。でも…」

「…俺じゃダメかな?」



小柳くんは悲しそうな顔をした。
…そんな顔しないでよ。
小柳くんは優しくて素敵な人だと思うよ?
でも、あたしは…



「違うの!小柳くんは…!」



あたしがそう言いかけて立ち上がった時だった。
腕を誰かに掴まれ、引っ張られる。
突然のことに、あたしは誰かの懐へ。



「…探したんだぞ」

「…晃!?」



あたしを引き寄せたのは、晃だった。
そして、晃はあたしを後ろから抱き締めた。
…なにしてるの!?



「…ちょっと、晃!?」

「…バカ野郎」

「晃にバカって言われたくないんだけど!」




あたしは抵抗するが、びくともしない。
晃はもう子供じゃない。
大人の男なんだ。



「…他の男んとこ、行くな」

「え…」



晃はあたしの耳元で囁いた。
その瞬間、ドキッとした。
晃が珍しく、弱々しかったから。
晃に余裕がないように思えたから。