あたしは無我夢中で走った。
気を紛らわせないと、涙が出そうだったから…



「…おい、結奈!」



しかし、追いかけてきた晃に腕を掴まれ、動けなくなる。



「…離して」

「無理」

「…独りにして」

「無理」



…どうしてなの?
どうしてこんなにも晃はあたしを引き留めるの?



「…どうしてよ…」



すると、晃にグイッと腕を引っ張られた。
そして、あたしは晃の腕の中に。



「お前を放って置けるかよ」



晃は抱き締める力を強めた。
…恥ずかしいよ、ここ廊下だよ!?



「晃、みんなに見られちゃう…!」

「…俺は別に構わねぇよ。お前なら」

「えっ…?」

「…それに、泣き顔誰にも見られたくねぇからな」

「…晃のバカ」

「バカで悪かったな」



あたしは晃の胸に顔を埋めた。
そして、静かに泣いた。
晃の胸と腕は見た目より、ガッシリしていて男らしかった。
…晃、ありがとう。
あたし、晃がいなかったらどうしてたかな…?
晃がいないなんて、考えられない。



…あーあ。
あたしの初めての恋、終わっちゃった。



…この時からだろうか。
あたしの中の何かが変わっていったのは……