朝食を終え、玄関に向かおうとする。



「…結奈!」


名前を呼ばれ、振り向く。
お母さんがお弁当箱を2つ渡してきた。



「…晃くんに後で渡してあげて?」

「うん」

「…結奈!置いてくぞ!」

「…待って!」



あたしはお弁当を鞄に入れながら、急いで玄関に向かう。



「お邪魔しました!ご飯美味かったです!」

「いつでもおいで?」

「はい!ありがとうございます!」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」



あたしと晃は家を出た。
…春のにおい。
暖かい風。



「…やっべ!後5分で遅刻!」

「えぇ!?間に合わないじゃん!」

「3分で行ってやる。…乗れよ」



そう言うと、晃は家の前に留めていた自転車に跨る。
…後ろに乗れってこと?



「…あたし、重いよ?」

「知ってる」

「ひどーい!」

「冗談だろ!早く乗れって!」

「…晃のバカ」



あたしはそう言って、晃の後ろに乗る。
晃はあたしが気にしてることを平気で言ってくる。
…3分で行ってよね!



「…飛ばすから、ちゃんと掴まってろよ」

「…うん」



あたしは晃のブレザーの裾を掴んだ。


「…ったく、人の話聞いてたのかよ」

「…あっ」



すると、晃はあたしの手を掴んで自分の腰に持っていった。



「…行くぞ」

「…うん」



あたしは掴まっていた晃の腰に力が入る。
自転車は勢いよく走り出す。
予想外のスピードで走る晃。
…風が強い。