車を走らせながら、高校以来、七年ぶりにちゃんと君と話した。

「このあと暇?なんか予定ある?」

「なんもない、予定まっさら」

「よかった」

 僕は安心して職場へ向かった。

「今は日本語講師をしてる。フランスで仕事してるのは、たまたま仕事の誘いが来て、面白そうだと思ったから。連絡先を教えなかったのは、わざとじゃなくて、前の携帯がデータごと壊れたから」

「じゃあ、フランスに行くことを教えてくれんかったんは、なんで?」

「それは…」

 連絡を取りづらかったから。

 君の携帯に連絡して、もし万が一にでも彼氏が出るのが怖かったから。

「彼氏ができたって聞いたから、遠慮した」

「彼氏?私、彼氏おったことないし、彼氏おったら遠慮するって意味わからん!」

「…え?彼氏…いないの?」

「おらんし、おったこともない」

「嘘だろ…」

 今更すぎる事実に、後悔の念が押し寄せる。

 この三年間、なんのために慣れない土地で苦労してきたのかわからない。