その人は寒い冬の日。

 通い慣れたカフェで見かけた。

 周りと比べて格段に背が低くて、お世辞にもスタイルは褒められない女性。

 深く帽子をかぶり、顔は見えないが、おそらくこの辺の人ではない。

 華奢な体つきなのに、大きなキャリーバッグとパンパンに膨れたトートバッグを持ったその人の腕は、今にも折れてしまいそうで。

 つい、話しかけてしまった。

「荷物、持ちましょうか?」

 彼女は話しかけられたことに気付かなかったのか、はたまた無視をしたのか、僕の前を通り過ぎてカフェから出て行ってしまった。

 僕の心臓は激しく脈打ち、口内は渇き、彼女が出て行った扉からしばらく目が離せなかった。

 一瞬だけ見えた彼女の横顔は、まるで、君そのものだった。