side:セルリア
ディーブと別れて、其の辺を唯歩いていた。
見張る的な事を言われても、大半は暇だ。
ドールはギフトからの命令だから、嬉しそうにしているけど...せめて話し相手が欲しいな。
何もする事が無さすぎる。

とは言え、勝手に何処かへ行ってしまっては、ディーブの身の危険が迫っていても対応出来なくなる。
知り合いが此処に来ていれば、話はまた変わるのだが...。

小さな広場にある小汚いベンチに、腰を降ろしながらそんな事を思った。
何気無く広場を見渡すと、見た顔が視界に入った。
グレーの髪をした筋肉質の女だ。


「ヘルバート!!」


俺がそう呼ぶと、其の女は辺りを見回して俺を見つけ出した。
何か買い物でもしたのか、女の腕の中には紙袋があった。
女は俺を見つめて、勢い良く走ってきた。俺の目の前に立つと、怖い形相で俺を睨んできた。


「私のミドルネームを言うなと、何度言えば其の脳味噌に刻み込まれるのです?」

「お前俺の事嫌いだから、名前呼んでもシカトするだろ。」

「否定はしない。」


否定しないのかよ。
この女___シェバ・H(ヘルバート)・マスタガラは、さっきも言った通り俺の事を嫌っている。
シェバは溜息をついて、眉間に指を押し付けた。


「んな顔すんなよ。久しぶり会ったんだからよ。」

「私は貴方に微塵も会いたいとは思っていません。」

「冷たい事言うなよ。...仕事終わりなのか?」

「そんな所です。流石のアヴァンもあの死体には参っていました。」


あの変人が参るくらいの死体って事は、相当のものなんだろうな。


「余りの汚さに発狂、錯乱、其の他諸々の症状が出てしまって...安定剤を購入したんです。」

「そう言えば潔癖症だったな。何時もベタベタしてくるから、忘れてた。」


シェバが羨ましそうな目で、俺を見つめる。
何だ、気持ち悪い...。


「私もアヴァンにハグされたい...。」

「俺見て言うなよ。」


取り敢えず、シェバの肩に手を置いた。