あれから一旦解散することになり、ベティは家へと帰って行った。
ギフトは明日から副業の仕事場に泊まる為の支度を始めに、自室へ行ってしまった。
ドールは家に居るのも暇だと言う事で、何処かへ出掛けに行った。
リビングに残されたぼくとセルリアは何もする事が無く、暫く椅子に座っていた。

ギフトが提案した作戦は明日から決行される事になり、ぼくは憂鬱な気分にならざるえなかった。
囮だなんて考えるだけでも凹む...。

セルリアはそんなぼくの気持ちを悟ったのか、頭を撫でてきた。
慰めのつもりなのか。


「俺が近くにいるんだ。大丈夫だって、」

「だけど...、囮は良い気分じゃ無い。」

「生前は普通に自分で囮とか、やってたんだがな。」

「セルリアは生きる為だろ...。」

「そーだけどよ。割と大丈夫なもんだぜ。」


セルリアの頭は能天気だな...、楽天的とも言えるのだろうか。
ぼくはそんな風に考える事は出来ないよ。

囮って事はさ、味方に監視されて尚且つ敵に狙われる事でしょ。
敵は仕方が無いと割り切れるのだが、味方に監視されるのはとても不愉快だ。
此れはぼくの過去が深く関わっていると思うのだが、此処で言っても如何しようも無い事だ。

物理的には進んでいる筈なのに、精神的には哀しい程に囚われたままだ。
ぼくはあの時身も心も自由になる為に、あれ程の事を犯したというのに...。

其の点セルリアは尊敬している。
1度死んだというのに、病んでいる様子は見られない。
気にしていないなんて可能性は無いと思うが、如何してそうも明るく振る舞えるんだろう。

やはり、セルリアはよく解らない。
10年前の偉人(殺人鬼として)だから、......此れは偏見になるな。

よく考えてみればセルリアが死んだのはぼくが3歳の時か、普通に歳をとっていればセルリアはギフトと同年代になるのか...。
ならば、精神年齢はギフトと同じになるという考えでいいのか。


「おい、ディーブ。何考えてるんだよ。」

「...セルリアの事。」

「其れは素直に喜んでいいのか...?」


セルリアの苦笑の声が聞こえる。


「...ぼくに、聞かないでよ...。」


其の後ぼく達は何か特別にする事無く、暇を持て余した。