避け続ける以前は、わたしが少しでも嫌がる素振りをすると直ぐ様察し、それ以上踏み込んでくることはなかった。付き合っている噂を前に、否定せず柔和に笑みを浮かべはするけれど、今までの男みたいに迫ったり彼氏だと主張してきたりはしなかった。
今まで、性的に迫ってきた男とは、それまで曖昧にしてきた関係をその途端に切ってきた。幾人も。ずっと。お陰でわたしの身体はまだ清らかでいる。蕁麻疹でみみず腫の身体など、抱く気も失せるだろうけれど。
ベンチの背もたれに痛いくらいに背中を押し付けて逃げてみても、それは抵抗にもならない。
「へえ――逃げないんだ?」
「……」
……そうだ。
これは、わたしが望んだことじゃないの? 探偵に頼んだこととよく似ている。
後腐れは、おそらく、よりにもよって一番あるのだろう。けれどわたしの望み通り。頼まなくても酷くしてくれそうだ。
わたしに枷を。好きな人を困らせるような欲望の排除を。
「……」
時刻は十九時。公園内の出入り口は同じ道路上に二ヵ所。よって、これくらいの時間から人の往来はここにはない。道路からわたしたちが見えたとしても、デートにしか思わないだろう。
お互いが見に纏っている布越しに体温を感じる二の腕から、徐々に身体全体を侵食していく痒みと気持ち悪さ。ああでも、灯りの少ない、もう夜色のこんな場所では顔まで蕁麻疹が上がってきても気付かれないかもしれない。好都合だ。いっそここでこのまま事を起こしてくれても。見かけたことはないけれど、茂みの中とか聞いたことがある。
ただ、ひとつだけは告げておかなければ。
「わたし――好きな人が、います」
「――、そう」
ここで引いてくれない人で良かった。けれど、後々どうか、悔やんだりはしないでほしい。酷いのは、わたしのほうだから。
なのに……どうして……
どうして、決心が一瞬で揺らぐことが起きてしまうのだろう。
わたしのヒーローが、偶然すぎるタイミングでそれを壊しに走ってきた。



