鳴り続けるコール音は、留守電の設定をしていなかったから相手が飽きるまで止むことはなく。
飽きがこないのは、電話を鳴らし続けることか……十中八九それは逃避としての答え。執着は、もっと違うところなのは感じていた。だから、それが怖くて連絡をとれなかった。
「……もしもし…………っ」
電話の向こうの彼は、もう随分感情が昂っていて、冷静な声とは裏腹に話も聞いてもらえない。自宅まで行くと言われ、踏み込まれたくない一心で近くの公園で待ち合わせることになってしまった。
怠い身体に鞭を打ち、数時間ぶりに部屋から這い出した。
わたしを呼び出した彼は、同じ高校大学へと進んだ中学校からの同級生で、存在こそ知ってはいたけれど、話すようになったのは大学からだ。昔は、誰がどうやっても学年首位から陥落しない、運動も人間関係も素晴らしい人として有名だった。そんな人がわたしと同じ大学とは驚いたけれど、つい最近、それはわたしと進学先を揃えたからだと知り、徐々にフェイドアウトを目論んでいた。その執着に背筋が震え、鬱陶しくもなったのだ。
「体調は大丈夫?」
「……」
「これ、お見舞」
差し出されたケーキを、両手を後ろに回して断った。今日のケーキはそれじゃない。あなたからはそんなの要らない。
誘いや、大学で顔を合わせることも避けていた。普通の人でも察するだろう。加えて彼は頭のいい人。もう、わかりきっているのにこんな態度をする。
好意をもってもらえるのは頭が下がる思いだ。こんな不実でどうしようもないわたしに。付き合っていると周囲に囁かれ、男避けにもなるし放っておいた。もう、兄への想いは確定したのだし、そういう意味の利用はしなかったけれど、適当に扱ってしまったひとり。この彼だけは、その仕打ちに嫌気がさすこともなくわたしの近くにいた。
「正式に付き合おう」
目の前の頭のいい彼は、やはり今日も変わらずだった。有無を言わさないといった告白は漏れた事項を補うためのもの。わたしをベンチまで引き摺っていき強引に座らせ、
「イエスと言うまでやめないよ」
退路を絶つように、自分の両の腕で囲い込んできた。



