――……
欲、というものは、本当に厄介だ。
兄を好きだと自覚し数年が過ぎ、なんだかんだで大学生だなんて、生きているとは思わなかった。
心で秘めているだけなら構わないだろうとしていた兄への想いは、それだけでは物足りなくなる。友達が好きな人と付き合え、デートをしたりキスをする。遅かれ早かれ、その先の行為も。
端的にいってしまえば欲求不満だったのかもしれない。情けない。ひとつ屋根の下に、無防備にわたしだけにすがる兄がいて。
わたしはきっと、とんでもなく貪欲でいやらしい。
伝えられない想いに、わたしだって潰されそうになる。強くないのだ。永遠に兄を好きでいたいしそうなのだと思う。……けれど。
秘めるだけの想いはやっぱり辛い。これでもし、兄がわたし以外の女を生涯の人として選んだらどうなるのだろう。先日、駅前で兄と女友達が歩いているだけで嫉妬した。近い将来わたしは死んでしまうかもしれない。けれど兄はきっと悲しむからそれは出来ない。
これしかなかった選択肢を抱え込むには、わたしはまだまだな人間だった。
もやもやとした袋小路な問題を前に、思考はおかしな方向へとも進む。
――兄とわたしは、容姿に似ているところがあまりない。
ある日鏡の前で、わたしは希望にすがる。高校時代から貯めてきたバイト代はその希望に全額使った。
地元から離れた、ある程度世間から認知をされていて、けれどあまりきちんとしていない事務所を執念で探した。
探偵事務所とは名ばかりの、何でも屋。
調べてもらった。そこにいいた唯一の探偵の男。それらしく作ってあった事務所のホームページに載っていた、兄にほんの少しだけ雰囲気の似た、所長だと名乗った男に。
あの母親だった人ならあるかもしれない。
兄とわたしは、本当に兄と妹なのか――探偵に震えた声で依頼を伝えた。



